2026年8月(葉月) 心の傷に寄り添う「グリーフケア」の視点

2026年8月(葉月) 心の傷に寄り添う「グリーフケア」の視点

暦の上では立秋を過ぎると秋の気配が立ち始め、処暑には暑さも和らぎを見せます。
とはいえ、現実にはまだまだ厳しい残暑が続く毎日。猛暑による体の疲労とともに、心にも知らず知らず負荷が溜まりやすい時期です。

また、7月の熊本地震をはじめ、予期せぬ災害や様々な出来事に心を痛められている方も多いのではないでしょうか。

亡くなられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆様へ心よりお見舞いを申し上げます。

心身ともに揺らぎを感じやすいこの季節、今月は「グリーフ(喪失に伴う悲嘆)」と向き合うヒントをお届けします。


グリーフは誰もが経験する自然な心の反応

私たちは人生において、様々な「失う体験」に直面します。
大切な人やペットとの死別のほか、離婚や失恋といった生別、あるいは転身・退職・引っ越しなど慣れ親しんだ環境から離れること、病気や怪我による健康状態の変化も大きな喪失です。

このような喪失に直面した際、胸を締め付けられるような悲しみ、動悸や疲労感、不眠、集中力の低下、あるいは込み上げる怒りや罪悪感など、心身に多種多様な変化が生じます。

これを心理学では「グリーフ(喪失に伴う悲嘆)」と呼んでいます。
グリーフは決して心の病気ではなく、大切なものを失ったときに誰もが示す自然な反応です。

特に日本では「周囲に迷惑をかけてはいけない」「感情を表に出すのは良くない」と考えがち。

しかし、悲しみを抑え込む必要はありません。グリーフの本質を知ることが、心を保護する大切な一歩となります。

 

悲しみのプロセスを知り、揺れる自分を認める

グリーフの道のりは一筋縄ではいきません。

上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケン氏が提唱した「悲嘆の12のプロセス」は、私たちがどのような段階を経て心の平穏を取り戻していくかを教えてくれます。

このプロセスは必ずしも数字の順番通りに進むわけではありません。
怒りと罪悪感が同時に押し寄せたり、ひとつの段階に止まったり、一旦は落ち着いたように見えても過去の段階に引き戻されたりします。

しかし、後戻りしても、振り出しに戻ることはありません。

揺れ動く感情のサイクル自体が、心が傷を癒やそうとする健やかなプロセスです。

抱え込まずに表出させるアプローチ

グリーフを長期化させず、和らげていくために大切なのは、胸の中に溜まった感情を抑え込まず、外に出して(表出させる)経過していくことです。

・思いを文字に書き出す:整理できない感情や言葉にならない痛みをノートにそのまま書き留めてみる。

・信頼できる人に話す:自分の気持ちを否定せず耳を傾けてくれる相手に、心の内を静かに語ってみる。

・「今の状態」をそのまま許可する:「泣いてもいい」「今は元気がなくて当然だ」と自身を労わる。

一人でどうして良いか分からないときは、上記の他、カウンセリングなどの専門的なサポートを活用するのも良いことです。